手外科医が注目する「メノポハンド」とマッサージの可能性

更年期前後の女性から
「指がこわばる」「朝に手が動かしにくい」「ペットボトルのふたが開けづらい」
といった訴えを聞くことが増えています。これらの症状は、近年**「メノポハンド」**と呼ばれることがあります。

メノポハンドは正式な医学用語ではありませんが、更年期に起こりやすい手指の違和感や痛みを総称した言葉として使われています。本記事では、手外科の視点から考えられる原因と、日常生活に取り入れやすいマッサージによるセルフケアについて解説します。


メノポハンドとは何か

メノポハンドとは、主に更年期(閉経前後)にみられる手や指の不調を指す言葉です。具体的には次のような症状が挙げられます。

  • 朝方に強い指のこわばりがある
  • 指を曲げ伸ばしすると痛む
  • 手指が腫れぼったく感じる
  • 細かい作業がしづらい

これらは一時的な不調として見過ごされがちですが、症状が長引く場合には注意が必要です。


更年期と手の不調の関係

更年期には女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が大きく変動します。エストロゲンは関節や腱、腱鞘の柔軟性や滑走性にも関与していると考えられています。

そのためホルモンバランスが変化すると、

  • 腱や腱鞘の動きが悪くなる
  • 炎症が起こりやすくなる
    といった状態が生じ、手指の痛みやこわばりにつながる可能性があります。

手外科でよくみられる疾患との関連

メノポハンドと似た症状を示す疾患は、手外科の診療現場では珍しくありません。代表的なものとして、以下が挙げられます。

ばね指(弾発指)

指を曲げ伸ばしする際に引っかかりや痛みが出る状態です。更年期の女性に多く、メノポハンドの背景に隠れていることもあります。

手根管症候群

手首の中で神経が圧迫され、指のしびれや痛みが出ます。夜間や明け方に症状が強くなるのが特徴です。

変形性指関節症

加齢や負荷により指の関節が変形し、痛みや動かしづらさを感じます。

これらの疾患は見た目や自覚症状だけでは区別が難しく、手外科での専門的な診察が重要になります。


「様子見」でよい場合と受診すべきサイン

手の不調がすべて医療機関の受診を必要とするわけではありません。しかし、次のような場合は手外科の受診が勧められます。

  • 痛みやこわばりが数週間以上続く
  • 指が途中で引っかかり、伸びなくなる
  • しびれや感覚の鈍さがある
  • 日常生活に支障が出ている

早期に原因を見極めることで、保存的な対応で改善を目指せるケースもあります。


マッサージによるセルフケアの考え方

医師の診察で緊急性の高い疾患が否定された場合、マッサージなどのセルフケアを日常に取り入れることが一つの選択肢になります。

マッサージの目的は

  • 血行を促す
  • 筋肉や腱周囲の緊張を和らげる
    といった点にあります。治療効果を保証するものではありませんが、手の使いすぎによる疲労感の軽減を期待する方もいます。

自宅でできる簡単な手のマッサージ方法

以下は一般的なセルフケアの一例です。

手のひら全体

反対の手の親指で、手のひらを円を描くようにやさしく押します。強く押しすぎないことがポイントです。

指の付け根

指の付け根を一本ずつつまむようにし、軽く回します。こわばりを感じやすい部分です。

手首周辺

手首を温めてから、周囲をなでるようにマッサージします。

※痛みが強い場合や悪化する場合は、無理に続けず中止してください。


マッサージと医療の正しい距離感

マッサージはあくまでセルフケアや補助的な手段です。
**「マッサージだけで治る」「病院は不要」**といった考え方はおすすめできません。

特に、ばね指や手根管症候群などは、進行すると治療期間が長くなることがあります。手外科での評価とセルフケアの併用が、安心につながります。


院長コメント

「更年期に手の不調を感じる方は少なくありません。
マッサージで楽になることもありますが、背景に手外科疾患が隠れている場合もあります。
我慢せず、一度専門医に相談することで安心して対処できますよ。」


まとめ:メノポハンドは早めの理解と対処が大切

メノポハンドは、更年期というライフステージに伴って起こりやすい手の不調の総称です。

  • 手外科的な疾患が隠れていないか確認する
  • 問題がなければマッサージなどのセルフケアを取り入れる

この二つを意識することで、不安を減らしながら日常生活を送ることができます。

手は毎日使う大切な部位です。小さな違和感でも、気になる場合は早めに専門家へ相談しましょう。