ストレッチは10秒では短い? 何秒行うべき?」 ― 科学的根拠から考える“ちょうどいい”時間

ストレッチをするとき、「10秒で十分」「30秒は必要」「長くやればやるほど良い」など、さまざまな情報を耳にします。では実際のところ、10秒のストレッチは短いのでしょうか? それとも十分なのでしょうか? 本コラムでは、研究結果をもとにストレッチ時間の妥当性を一般向けに分かりやすく解説します。

■ まず結論:10秒は“効果ゼロ”ではないが、目的次第で不足する

結論から言えば、10秒のストレッチでも一定の効果はあります。しかし、柔軟性の向上や可動域改善を目的とする場合、10秒では不十分なことが多いと考えられています。時間設定は「何を目的にストレッチをするのか」によって変わります。

■ なぜ「時間」が重要なのか?

筋肉や腱はゴムのような性質(粘弾性)を持っています。短時間伸ばしただけでは、元に戻ろうとする力が強く、変化は一時的に終わります。一方、一定時間以上伸ばし続けることで、組織が徐々に伸張刺激に適応し、可動域の変化が起こりやすくなります。

また、ストレッチによる可動域増加の初期変化は、筋の長さ変化よりも「伸ばされることへの耐性(神経学的適応)」による影響が大きいとされています。

■ 研究から分かる「秒数」の目安

多くの研究では、1回あたり20〜30秒の静的ストレッチが用いられています。

10秒:
軽いリラックスや一時的な可動域変化は期待できるが、長期的な柔軟性向上には不十分なことが多い。

20〜30秒:
柔軟性向上や可動域改善に最も多く用いられる時間帯。Weppler & Magnusson(2010)は、この程度の保持時間を継続することで、安定した可動域改善が得られる可能性を示しています。

60秒以上:
可動域改善効果は頭打ちになりやすく、運動前に行うと一時的に筋出力が低下する可能性が報告されています。

つまり、「長ければ良い」というわけではなく、効率と安全性を考えると20〜30秒が現実的な落としどころといえます。

■ 10秒ストレッチが向いている場面

では、10秒のストレッチは意味がないのでしょうか? 決してそうではありません。以下のような場面では有効です。

〇運動前のウォームアップ中

〇仕事や家事の合間の軽いリフレッシュ

〇痛みや緊張が強く、長時間伸ばせない場合

この場合の目的は「柔らかくする」よりも、筋の緊張を軽く下げることです。短時間でも、こまめに行えば身体への負担を抑えながら効果を得られます。

■ 効果を高めるための“秒数以外”のポイント

ストレッチ効果は時間だけで決まりません。

〇頻度:週1回より、短時間でも週3〜5回

〇強度:「痛い」ではなく「心地よく伸びる」

〇呼吸:止めず、ゆっくり吐く

〇継続:2〜4週間で安定した変化が出やすい

同じ30秒でも、力んで行うのとリラックスして行うのとでは効果が大きく異なります。

■ まとめ

ストレッチ時間について整理すると、

〇10秒:短期的・補助的な効果

〇20〜30秒:柔軟性向上に最も推奨

〇60秒以上:目的と状況次第で注意が必要

「10秒は短いのか?」という問いへの答えは、目的次第です。本格的に柔軟性を高めたいなら20〜30秒、日常のケアや運動前なら10秒でも十分意味があります。

大切なのは「何秒やったか」よりも、「どの目的で、どれだけ継続できるか」。自分の生活リズムに合ったストレッチ時間を見つけ、無理なく続けていきましょう。