子どもの腰痛は増えているのか?

「成長期の痛み」で片づけてはいけない理由

腰痛は中高年の悩み、というイメージは今も根強い。しかし近年、学校現場や医療の現場では「腰が痛い」と訴える子どもが珍しくなくなってきた。保護者や教師の中には、「最近の子どもは体が弱くなったのではないか」と感じる人もいるだろう。では実際に、子どもの腰痛は増えているのだろうか。

疫学研究を見てみると、子どもや思春期の腰痛は、決してまれな症状ではないことがわかる。国際的な調査では、学童期から思春期にかけての子どものうち、およそ3〜4割が一度は腰痛を経験すると報告されている。特に年齢が上がるにつれて有病率は上昇し、思春期後半では大人と大きく変わらない頻度に達することもある。

興味深いのは、年齢そのものだけでなく、「時代の変化」による影響が示唆されている点だ。近年の調査では、過去に比べて子どもの腰痛の報告率が高い傾向が見られるという指摘がある。これは単一の原因によるものではなく、生活様式の変化が複合的に影響している可能性が高い。

たとえば、現代の子どもは長時間座って過ごす時間が圧倒的に増えている。学校の授業、家庭での学習、そしてスマートフォンやタブレットの使用。これらはいずれも前かがみ姿勢を長く続けやすく、腰椎や周囲の筋肉に持続的な負荷をかける。また、外遊びや自由運動の機会が減少し、体幹筋や股関節周囲筋を十分に使わない生活も、腰への負担を増やす要因と考えられている。

一方で、スポーツ活動が盛んな子どもにも腰痛は起こる。特に成長期は、骨の成長スピードと筋肉・腱の柔軟性のバランスが崩れやすい。急激な身長の伸びに筋肉が追いつかず、腰部にストレスが集中することがある。過度な練習量や休養不足が重なれば、腰痛は慢性化しやすくなる。

よく話題に上る「重いランドセルが腰痛の原因」という説については、現時点では決定的な証拠は少ない。確かに負荷の一因にはなり得るが、それ単独で腰痛を引き起こすとは言い切れないというのが研究者の見解だ。むしろ、姿勢、活動量、心理的ストレスなどを含めた生活全体の影響が重要視されている。

見逃してはならないのは、子どもの腰痛が「一過性の成長痛」では終わらない場合があるという点だ。思春期に腰痛を経験した人は、成人後も腰痛を繰り返しやすいことが報告されている。つまり、子どもの腰痛は将来の健康にもつながるサインである可能性がある。

子どもが腰の痛みを訴えたとき、「そのうち治るだろう」「成長期だから仕方ない」と軽視するのは簡単だ。しかし、体の使い方や生活習慣を見直すきっかけとして捉えることが、長期的には重要になる。子どもの腰痛は、現代社会のライフスタイルを映す鏡なのかもしれない。