「捻挫は癖になる」とはどういうことか?

繰り返す足首のトラブルの理由

「一度足首を捻挫すると癖になる」とよく言われる。実際、スポーツ現場や日常生活でも、同じ足首を何度も捻ってしまう人は少なくない。しかし、捻挫そのものが“体質”のように繰り返されるわけではない。医学的には、捻挫後に足関節の安定性や感覚機能が低下した状態が残ることが、再発を引き起こす原因と考えられている。

足首の捻挫の多くは、足が内側に倒れる「内反捻挫」で、外くるぶし周囲の靱帯が伸ばされたり損傷したりする。このとき傷つくのは単に靱帯だけではない。近年の研究では、靱帯には関節の位置や動きを感じ取る**感覚受容器(固有感覚)**が存在し、これが傷つくことで関節の位置を正確に把握する能力が低下することが分かってきている。

つまり、捻挫をすると「足首がゆるくなる」だけでなく、無意識にバランスを取る能力が落ちる可能性がある。すると、段差や着地のわずかな乱れにも対応できず、再び足をひねりやすくなる。この状態は「慢性足関節不安定症」と呼ばれ、捻挫を繰り返す人の多くに見られる。

さらに問題になるのは、十分に治る前に運動へ復帰してしまうことだ。痛みや腫れが引くと「もう治った」と感じてしまうが、靱帯の修復や神経機能の回復には数週間から数か月かかることもある。リハビリを行わずに競技へ戻ると、筋力やバランス機能が回復していないため、再受傷のリスクが高まる。

また、捻挫後には周囲の筋肉、とくに足首の外側を支える筋群の働きが低下することも報告されている。筋肉が適切に反応しないと、足関節を守る“反射的なブレーキ”が遅れ、再び同じ方向に足首が倒れやすくなる。

こうした理由から、現在のスポーツ医学では、捻挫の治療は「痛みを取ること」だけでなく、関節の安定性・筋力・バランス能力を回復させることが重要とされている。バランストレーニングや片脚立ち、ジャンプ着地練習などのリハビリが再発予防に有効であることも多くの研究で示されている。

つまり、「捻挫は癖になる」という言葉の正体は、体質ではなく、適切な回復過程を経ないまま元の活動に戻ってしまうことで再発しやすくなる状態を指していると言える。

もし捻挫をした場合、「ただの捻挫」と軽く考えず、しっかりと回復と再発予防のトレーニングを行うことが、将来のトラブルを防ぐ最も確実な方法である。捻挫は一度きりのケガではなく、その後の対応によって“癖”にも“予防可能な経験”にもなるのである。